長者窮子の譬喩・やるせない阿弥陀仏の御念力

 釈尊出世の目的は我々に阿弥陀仏を紹介する、このこと一つであった。
親鸞聖人はこれを正信偈の中に
「釈迦如来、この世に興出したもう所以は、唯、弥陀の本願海を説かんとなり」
とズバリ教えておられる。

ところが疑い深い我々は、本当に阿弥陀仏はおられるのか、どこにましますのだ。
という疑いがやまない。
そこで釈尊は、我々の目には見えねども、阿弥陀仏の熱烈な忍耐強い、やるせない御念力が、
我々を絶対の幸福に導く為に、昼となく夜となく
陰に陽に働きかけていて下さることを長者窮子の譬喩で教えておられる。


 昔ある所に大変な長者がいた。
長者は幼い一人子を掌中の玉のように可愛がっていた。
ところがその子がある祭の夜、迷い子になってしまった。
長者は我子を案じ悲しみ、八方手をつくして捜索したが、子供の行方は杳として判らなかった。
途方にくれた長者は最後の手段として国中で一番の大商店を建築した。
人を集めて何とか子供を探そうとしたのである。
豪壮なデパートは善美をつくし、極楽を思わせる偉観であった。
世人は国一番の商人と称讃したが、長者の心にあるのは我子恋しい思いのみであった。
早く我子を探し出して全財産をゆずり、子供の喜ぶ顔が見たかった。

一方、子供は祭の人ごみで悪者にさらわれてから、転々と売りとばされ、果ては見知らぬ他国へ捨てられ独りポッチの身になっていた。
もとより寄るべのない彼は苦しい流浪の旅を続けていた。
長い漂流生活に彼は身心共に疲れ切っていた。
その内彼は、長者の豪勢な風聞を聞いてふらふらと父の住んでいる都会へ足を向けた。
豪華な建物の前まで来た彼は、おずおずと内の様子を窺ってみた。
大玄関の奥深く主人とおぼしき上品な老人を、多くの偉そうな人々がキラ星の如く護衛していた。
窮子は余りの美しさに威圧され、そそくさと前を立ち去ろうとした。

だが一瞬早く獅子座の長者が窮子の姿を捕えた。
「おおあの子は我子に違いない」
長者は喜びに踊り上がって
「あの子を連れて来い」
と大声で叫んだ。

側近の者が窮子を追いかけ、とりおさえたが、窮子はあまりの恐しさに倒れてしまった。
この始終を眺めていた長者は胸が張りさける思いで
「その男を離してやれ」
と命じた。
正気づいた窮子は一目散に逃げて行くのであった。

後姿を断腸の思いで見送った長者は、やがて掃除人夫に
「窮子を連れてきたら、給料を倍にする」
と約束をして家まで連れてくるよう頼むのであった。

窮子は熱心なさそいにひかれて一緒に働く気になりおそるおそる長者の家にやって来た。
かくして窮子はその日から長者の家の掃除人夫となった。
長者は、我子のやせおとろえた、みすぼらしい哀れな姿を見ると、
「一日も早く親子名のりをして、全財産を与えてやりたい」
と切なさに熱い涙を流すのだった。

そうして長者は、次第に我子に近づき、
順々に責任ある仕事を任せ、ひたすら自分と子供の距離をせばめる事にのみ苦心惨たんするのであった。
そうした長者の心情努力によって日に日に親しみの度を増して行ったが、
依然として窮子の心の底には、自分は使われている者、
相手は長者様という越え難い溝があった。


一念で知る弥陀の慈悲

 そのうち、長者は重い病床に臥し臨終がせまり、
国王大臣を病室に招請し、我子を一同にあわせて、
始めて真実一杯を打ちあけるのであった。

「皆様この子は外ならぬ我一人子でございます…。
かような訳で二人は正真正銘の親子で、今日只今より私の全財産はこの子の物でございます」
長者の声涙下る言葉を聞いて誰よりも驚いたのは窮子であった。
「ああ長者様が私の親であったのか。
私は長者様の一人子だったのか。

そんな事とは露知らず、親を恐れ疑って来たのは何と愚かな自分であったのか」
と窮子は歓喜と懺悔に泣きくずれるのであった。

長者は阿弥陀仏、
長者の財産は六字の御名号、
掃除人夫は善知識、
窮子は我々にたとえられたのである。

窮子が最初ふらふらと長者の家へやって来たのは、ひとえに長者の念力であるように、
我々に聞法心が起きたのは、偏に阿弥陀仏の強い御念力による。

しかし仏法を聞き始め、聴聞を重ねて行っても、なかなか阿弥陀仏が信じられず、
疑い計らい、つい目先の欲に惑わされるのは窮子が長者を自分の親と知らず恐れ、疑い、
いつも心の底で自分とは関係の無い長者様と思っているのと同じである。

そして最後に窮子が「この子は私の一人子です私の全財産はこの子の物です」
の一声を聞いて、懺悔と歓喜に泣きくずれたように、我々も弥陀の呼び声を聞いた一念で、
一切の無明の闇が晴れ、大宇宙の宝が我物となり、大安心大満足の絶対の幸福にさせて頂けるのである。

(事実の全分をあらわした譬喩はないから
 1長者と窮子は、最初一緒にいた、
 2長者が病気になる点はあわないことをつけ加えておく)

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